言葉にできない想いを形に。奥深き「合掌」の世界

こんにちは 
 
神奈川県相模原市の葬儀社、神奈川福祉葬祭(葬儀のかなふく)の鈴木隆です。
ふと手を合わせる時って、ありますよね 
 
葬儀や法事の時に合掌をするのはもちろんですが…
食事の前に「いただきます」と言うとき。
相手に対して「ごめんなさい」と謝るとき。
あるいは、誰かの幸せを祈るとき。
…などなど、無意識に手を合わせる合掌には、じつは深い意味が込められています。
今日はそんな合掌について、お話ししてみたいと思います。
■合掌とは何か
仏教では、合掌は「アンジャリ」と呼ばれ、古代インドに由来します。
右の手は仏(真理)を、左の手は衆生(自分)を表す。
その両方をぴたりと合わせることで、「仏と自分がひとつになる」という意味を持ちます 
 
つまり、合掌は「あなたと私がつながる」という祈りの形。単なる礼儀や作法ではなく、「敬意」「感謝」「祈り」を表す行為なんです。
古代インドの人たちは、日常的に合掌をして挨拶をしていたようですが、やがてそれは、国や宗派を越えて、世界中に広がっていくこととなります。
■手を合わせるという祈りのかたち
合掌は、言葉を超えた「心の表れ」と言えるのかもしれません。
悲しみの中では、うまく言葉にできないことがあります。でも、手を合わせることで、言葉にできない思いを静かに形にできます。
葬儀の現場でも、故人の前で合掌される方の姿には、いつも胸を打たれます 
 
「ご冥福を祈る」だけでなく、「あなたを想っています」という優しいメッセージが、あの手の中に宿っているように感じるのです。
■いろいろな合掌
合掌にもいくつかの種類があります。代表的なものを少しご紹介しますね。
・堅実心合掌(けんじつしんがっしょう)
もっとも一般的な合掌です。両手の指先をそろえて、隙間のないようにぴたりと合わせる。
素直で偽りのない祈りの心を表すとされます。
・虚心合掌(こしんがっしょう)
両手のあいだに、ほんの少し空間を残す合掌。子どものような無垢な心を表すといわれます。心に風が通るような、やわらかな祈りの形です。
・金剛合掌(こんごうがっしょう)
僧侶が法要で行う、少し特別な合掌。真言宗などでは金剛合掌が推奨されていますね。指を交差させて組み、右手を上に重ねる姿は、まるでダイヤモンド(=金剛石)のように、仏と衆生の固い結びつきを表現しているようです。強い信念と仏への帰依を意味することから、「帰命(きみょう)合掌」とも呼ばれているそうです。

■印相・ムドラ ― 手で神仏を表す
真言宗などの密教の世界では、手の形や指の組み方で仏を表します。これを「印相(いんそう)」と呼びます。サンスクリット語では「ムドラ」といい、祈りや瞑想のときに特定の形をつくります。
ムドラはそれ自体で神仏を表したり、あるいは瞑想の時に指でポーズを作ることで、心を落ち着かせ、体内にエネルギーを取り入れ、脳や脳細胞を活発化させる効果があるのだそうです。
脳の神経は手のひらに密集していて、手を合わせるという動作は、脳の働きを落ち着かせ、心を整える効果もあるんです。合掌には、科学的に見ても癒しの意味があるんですね 
 
■日常の中の合掌
自分の心を整え、相手にも敬意を表す合掌。自身の幸せのため、円滑な人間関係のため、さらには世界平和のためにも、まずは形として合掌を習慣づけたいものです。
合掌は、なにも特別な儀式だけのものではありません。
「いただきます」「ごちそうさま」の時の合掌も、充分立派な合掌です。食べものを作ってくれた人、命をくれた自然への感謝の気持ち。それを、ほんの数秒のしぐさで表しているんです。
「ありがとう」や「ごめんなさい」のときも、自然と手が合わさることがあります。
その一瞬にこめられた合掌は、言葉より深い想いを表現しています。
亡き人への祈りも、きっと同じです 
 
合掌することで、亡き人への想いを伝え、安寧を祈ることにつながります。そして、手を合わせている自分自身も心が整い、悲しみに静かに向き合うことができます。
祈りは、誰かのためであると同時に、自分自身を癒す時間でもあるのです。
■かなふく鈴木が考える合掌の力
葬儀の現場で、ぼくは何百、何千という合掌の瞬間を見てきました。
涙とともに手を合わせる方。無言で、ただ静かに祈る方。どの姿も、切実で、言葉にならない想いにあふれ、美しいんです。
手を合わせることで、相手への想いを表すことができます。言葉にならない想いを目に見える手指の形で表現することで、人の心は少しずつ整っていきます。
悲しみ、感謝、赦し、願い、祈り——。これらがごちゃまぜになった、うまく言葉にできない感情そのすべてが、手の中でひとつになる。
それが合掌の力なのではないでしょうか。

■おわりに
合掌は、宗派を越えた祈りの共通語です。
「形から入って心に至る」ということばがあるように、まずは手を合わせてみてはいかがでしょうか。
祈りは、むずかしいことではありません。ただ、手を合わせる。それだけで、心はやさしくなれるのです 
 
葬儀のかなふく(株式会社神奈川福祉葬祭)
代表取締役 鈴木 隆 
 


 
  
 